構造設計と耐震診断知識の有効利用

北海道の積雪荷重は非多雪地域でも長期荷重に


北海道在住の構造技術者であれば、積雪荷重は多雪地域外でも長期荷重にする事は、当たり前の話しですが、本州の技術者は意外とこの事を知らない人が多いようです。




建築基準法では多雪地域外の場合は、積雪荷重を短期荷重として扱って良い事になっており、全国的にはそれが一般的だからだと思います。

では、何故北海道だけ、多雪地域外でも長期荷重で扱わなければならないのでしょうか?その前に、積雪に関する、法令、条例等を抜粋してみます。

●建築基準法施行令 第86条(積雪荷重)

積雪荷重は、積雪の単位荷重に屋根の水平投影面積及びその地方における垂直積雪量を乗じて計算しなければならない。

2.前項に規定する積雪の単位荷重は、積雪量1㎝ごとに1㎡につき 20N以上としなければならない。ただし、特定行政庁は、規則で、国土交通大臣が定める基準に基づいて多雪区域を指定し、その区域につきこれと異なる定めをすることができる。
【大臣が定め=平12建告1455】


●平成12年建設省告示第1455号

多雪区域を指定する基準及び垂直積雪量を定める基準を定める件

第1 建築基準法施行令(以下「令」という。)第86条第2項ただし書に規定する多雪区域を指定する基準は、次の各号のいずれかとする。

一 第2の規定による垂直積雪量が1m以上の区域
二 積雪の初終間日数(当該区域中の積雪部分の割合が1/2を超える状態が絶続する期間の日数をいう。)の平年値が30日以上の区域

これらの法令を元に北海道が独自に北海道建築基準法施行条例を定めている。その中で積雪に関係する部分を抜粋したのがこれです。

●北海道建築基準法施行条例第21条(多雪区域外の建築物等における応力度)

多雪区域外の区域の建築物につき令第八十二条に定めるところにより許容応力度等計算をする場合において、同条第二号に規定する長期及び短期の各応力度を計算するときは同号の規定にかかわらず、次の表に掲げる式によらなければならない。




この表をよく見ると「長期に生ずる力」の「積雪時」でG+P+S(固定+積載+積雪)となっており、積雪荷重を全く低減せずに長期荷重に加えて計算しなさいとなっています

通常多雪地域であれば長期で扱う場合は0.7倍して長期に算入する事になっている事を考えると、ちょっと過剰に感じるかもしれませんが、実はこれには理由があります。

単位積雪荷重が元々違うのです。北海道建築基準法施行細則により

多雪地域 の単位積雪荷重:1cmあたり30N/㎡
多雪地域外の単位積雪荷重:1cmあたり20N/㎡


となっています。つまり多雪地域の場合30×0.7=21なので多雪地域外と結局あまりかわりません。あとはこれに北海道で決めた垂直最深積雪量を乗ずればいい訳です。


 多雪地域の札幌市を例に挙げると、垂直最深積雪量140cmなので
  長期検討用積雪荷重=30*140*0.7=2940N/㎡

 多雪地域外の千歳市の場合は垂直最深積雪量80cmなので
  長期検討用積雪荷重=20*80     =1600N/㎡


北海道の場合多雪区域外であってもかなりの間根雪になり、雪が残ります。故に北海道では積雪荷重において独自の建築条令を定めて検討をする事になっているのです。

なぜこのテーマを取り上げたかと言うと、北海道内の建物の設計で、デザイナーが道外の構造技術者に構造設計を依頼する場合、デザイナー側からこの事を伝えてほしいのです。

特に大スパン平屋の鉄骨造などは、ほとんどの部材が長期荷重で決定するため、積雪荷重の扱いを間違うと後々大変な事になります。

過去に、本州の構造技術者が設計した鉄骨建物の構造図を見た事があります。

実は、デザイナーがあまりにスレンダーな鉄骨断面を見て心配になり私の所に図面と計算書も持ち込んだのです。

断面を見て、私は「あー、又やってる・・・」

そう思いつつ計算書の荷重表を確認し、積雪荷重を長期荷重として全て設計をやり直すようデザイナーにアドバイスしました・・・。

これはまだ気づいたからいいのですが、気づかず着工なんて事を考えるをさすがにゾッとします。そして、デザイナーは予定が大幅に遅れる事になり、青ざめた顔で帰っていきました。

建築は場所が変われば常識も変わります。地元ならではの内容は、デザイナーが確実に構造技術者に伝えられる知識と経験が必要な事は間違いありません。

Posted by tanaka-kozo at 2005年08月24日 19:19 | コメント (4)
この記事に対するコメント

はじめまして。先月まで札幌に住んでいました。
今は転勤で横浜に住んでいます。

この記事を読むまで北海道が長期荷重をG+P+Sにしているのを知りませんでした。勉強になりました。

また、2点ほど疑問があります。もしご存知でしたらお教えください。

1)通常、木造の壁量(令46条)の規定に積雪を考慮しているのか?
→多分していないのでは?

2)札幌に多いのですが、1階がRC造のガレージ(GLを上げて?地階扱い)で、混構造3階建ての木造住宅を2階建てとして申請している事例を何件か見ます。露骨に構造計算を避ける手立てとしか見えないのですが、この点については黙認されているのでしょうか?

以上、よろしくお願いします。

Posted by: ひろコング at 2006年04月17日 17:07

>1)通常、木造の壁量(令46条)の規定に積雪を考慮してい
>るのか?
>→多分していないのでは?

令46条では積雪について特に要求はないですが、経験的に重い屋根として壁量算定しているケースが多いように思います。
法令ではなく実状に合わせてそのようにしているのだと思います。

>2)札幌に多いのですが、1階がRC造のガレージ(GLを上
>げて?地階扱い)で、混構造3階建ての木造住宅を2階建て
>として申請している事例を何件か見ます。露骨に構造計算を
>避ける手立てとしか見えないのですが、この点については黙
>認されているのでしょうか?

混構造の場合、地上3階建てでも、札幌市内の場合は、特定の構造仕様に則って設計された場合は、1階RC壁式部分の構造計算を省略する特例があります。ただ最近この辺の状況が耐震偽装の問題なのか?特例の対応が変化していると噂で聞きました。状況が随時変化しておりますので、詳細は行政に聞く必要があると思います。

また、構造計算の話でなく、3階建て共同住宅などで耐火規定を逃れるためにやっているケースの方が・・・

Posted by: 田中@管理人 at 2006年04月18日 10:44

丁寧なご返答ありがとうございました。
やはり札幌市の特例があるんですね。

たまたま耐震診断(大学生の授業です。)を実施する際に入手した図書が道路面よりGLが+1500くらいになっていましたので・・・
図書上は2階建て扱いですが混構造として診断すべきですよね。

ついでで申し訳ありませんが(後学のため)もうひとつ質問させてください。

この時悩んだのが地盤状況です。図面上、RCパイル(8m、200φ、30本)ほど打ち込まれていることが分かるのですが、水平力に対する設計確認ができているのかどうか不明なため、水平力の地盤増幅をすべきかどうかという点です。

因みに
敷地は「新琴似」
建築規模は述べ床122㎡、建築面積60㎡
ほどです。

どう判断すべきでしょうか?

Posted by: ひろコング at 2006年04月25日 18:15

>図書上は2階建て扱いですが混構造として診断すべきです
>よね。

実務では建物外周の2/3以上が土に接していない場合は地上扱いで検討する事が多いです。また車庫の場合などは前面が完全に地上に出ているケースがほとんどなので、場合によっては建物全体に対する片土圧(車庫後ろ面からの)を考慮したりもします。

>図面上、RCパイル(8m、200φ、30本)ほど打ち込まれて
>いることが分かるのですが、水平力に対する設計確認ができ
>ているのかどうか不明なため

北海道でRC杭を使用している場合はほぼ100%水平力の検討をしておりません。というよりRC200φには曲げ耐力がほとんどありませんので、設計不能です。軸力のみで設計していると考えて間違いありません。さらに、構造計算をちゃんとやっていないケースも多々あり(札幌市の特例を有効利用し?)支持力計算すら怪しいというのが現在の北海道の状況です。

ただ、さすがにこれではまずいと思ったのか、業者さんたちはバタバタと対応に追われている状況で、RC杭で水平力の検討をなんとかできないかとがんばっているようですが、まだ一部の業者さんだけですね。

Posted by: 田中@管理人 at 2006年04月25日 18:34


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