●耐震性能を上げると、必ず建築コストが上がる?
建物全体のコストに対する構造部分のコスト割合は、概略25~30%くらいが構造躯体部分にかかるコストとなります。構造の各部分を細分化してみると、基礎・柱・大梁・壁・床・小梁となりますが、このうち床と小梁は積載荷重によって決まり地震とは無関係に決まるので地震の大小でコストは変わりません。
基礎・柱・大梁・壁が地震力の増加で変化する事になりますが、これらの部分は、耐震に対してのみの機能をもったパーツではなく、積載荷重(重力)を支える機能も合わせ持っています。
特に、低層建物でスパンの大きな場合は、積載荷重による部材決定が支配的となり、地震力を少しくらい大きくしてもコストがほとんど変化しない建物も存在します。
また、”壁”の場合は”雑壁”と言われる耐震要素ではない壁もあり、意匠設計者のプランニングによって壁配置やその量がきまる事が多く、計算上必要な耐震要素としての壁量よりも多く壁が配置されている建物も少なくありません。
したがって、その耐震要素と言われる各パーツの特徴や、構造部材の決定要素(地震荷重・長期荷重)の違いにより、地震力の増加がそのままコストUPにならない建物が存在し、全ての場合でかならずコストアップする訳ではない事がわかります。
場合によっては、計算上は基準法ぎりぎりで設計しているが、実は耐震性能は通常の1.5~2.0倍程度になっているケースもありえると言う事です。
●耐震性能と建築コストの一般的な傾向
とは言っても上記の例はレアなケースであり、現状の建物全般では、やはり耐震性能を上げると建築コストが上がる傾向があります。ここに中層以上のRC造(耐震壁有、無)・S造・SRC造の建物を試設計し建築コストを比較した資料があります。
この資料によると、建築基準法上の最低層せん断力係数を0.2とし、この時の構造躯体コストを1.0とする。そして層せん断力係数を0.3、0.4、0.5と大きくした時の構造躯体コストの変化を以下のように解説しています。
- 層せん断力係数0.2(1.0倍)→ 構造躯体コスト1.0
- 層せん断力係数0.3(1.5倍)→ 構造躯体コスト1.2
- 層せん断力係数0.4(2.0倍)→ 構造躯体コスト1.4
- 層せん断力係数0.5(2.5倍)→ 構造躯体コスト1.5
つまり地震力を1.5倍にすると、躯体コストが1.2倍程度になるという事です。
しかし、これは構造躯体部分のみのコストですから、建物全体で考えるとその増加率は当然もっと小さい値になります。
上記でも説明しましたが、構造躯体の建物全体に対する割合はだいたい30%程度ですから、建物全体では・・・
- 層せん断力係数0.3(地震力1.5倍)
→30%×1.2+70%=106%(1.06倍) - 層せん断力係数0.4(地震力2.0倍)
→30%×1.4+70%=112%(1.12倍) - 層せん断力係数0.5(地震力2.5倍)
→30%×1.5+70%=115%(1.15倍)
この傾向は中層以上の建物では構造の種別や、フレームの形式に関わらず共通の傾向であり、一つの目安となる興味深い結果であると思います。
Posted by tanaka-kozo at 2005年10月23日 20:36 | コメント (0)